巣の骨
足立和夫
椅子は
自身が何であるのかを知らない
ましてや そのうえに乗っていたほねが
何であるかも
また明らかではない
ほねからながれてくる臭気など
さらに わからなかった
ほねが
ときどき
飛び上がる理屈なんて
さっぱりだ
ただ
わかることはすこしある
それは椅子のする事ではないのだが
ほねの動きのいくつかについては
はっきりしていた
軽やかならば
それは深く愉しいのである
自由な声たちは神秘のかけら
重みがねじりこんでくれば
それは援けが必要であることも
わかっていた
声のない時間が
詰まったように永くつづいて
のしかかってくれば
とても危険であることも
椅子は
見分けることができた
ある冬の夕暮れどき
軋んでいた椅子は
見知らぬ砂漠で
解体され
それぞれの部分が
みどりの惑星のどこかで
巣箱になったり
焼かれて
灰になったものも多かった
ほねには
関係のないことではあったが
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