一瞬の夕立/おぼろげな加害

田中エリス



私との距離を恐れし君はいま捕らわれにけりアッラーの下で

選ばれし白薔薇のごときわたくしにからみつきたる空想の薔薇

おぼろげな加害を歌に流し込み自分のためにケーキ焼く春

エリス姫と呼ばれし頃は今よりもかわいい夢をたくさん見たぴ

送り火の神獣ははや干からびて肩に漂う優しき祖母あり

わたくしの真横の河もふっと死ぬバケツいっぱいの春の残骸

赤ちゃんの宇宙の言葉振りはらい大人になって帰る星空

極東の梅雨の終わりのサンタさん変なビルから皇居を見てる

ひもじくて万葉集にかぶりつくテントウムシの子に似た私

一瞬の夕立のあと透きとおるサラダボウルにほほえむ街よ




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