鋳物師屋村のにこにこだぬきと同じ穴のむじなたち
根石吉久
「ハリマオ」の原稿をなんとかしなきゃと思いながら、ほぼ一月が経った。少し書いてはうんざりし、こんな泥を吐き出しただけのようなものじゃどうにもな
らんと思い、気持ちがげんなりしたりした。これじゃ、原稿というより汚物だなとも思った。こんなことにこんなふうにかかずらっていていいのかと思うこと
と、村とか町のこの性質を放置しておいたんじゃ駄目なんだと思うことが交錯した。こういうことを放置して、民主主義じみたお題目を唱えている者たちは駄目
なんだとも思っていた。それにしても、うんざりする。読み返すと、気持ちがどよんとする。
しかし、もうどうにもならない。この泥を泥のまま、掲載すると腹を決める。そうしないと、「ハリマオ」は出ないし、百姓もできないし、塾の教材づくりも
できない。奥村さんの遺稿の整序もできない。
泥を泥のまま掲載し、何か問題が生じたら、またそれに応じるしかない。
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埴科郡、更埴市、千曲市と、生まれて育った村の所属が変わった。中という村は、中村と呼ばれることもあるし、中区と呼ばれることもある。その隣村に鋳物
師屋という村がある。ここは単に鋳物師屋と呼ばれる。行政単位としては鋳物師屋区と呼ばれることもある。小学生の頃は、鋳物師屋を通って学校に通った。鋳
物師屋にあった親の田を埋め土して家の自作を始めた時は四十歳を過ぎていたのかいなかったのか。十年以上かけてなんとか住めるところまでこぎつけた。家の
自作を始めて二十年くらい経つが、まだ断熱材が剥き出しのところなどがあり、完成していない。引っ越した時は、五十歳を過ぎていたような気がする。四十歳
前後に家を自作し始めて、五十歳前後からその家に住んだというくらいに大雑把に覚えている。記録しないから正確なことはみんな忘れてしまう。今は六十歳に
近い。
鋳物師屋区の中に、十二の常会があり、私は十二常会というところに属している。常会というのは、都会なら町内会と言われるようなものだろう。常会の役の
ひとつに協議員というものがあり、「ほっぺたまわし」で役が回ってくる。「ほっぺたまわし」というのは順番に役が回ってくることであるが、どうしてそう言
うのかは知らない。協議員は、鋳物師屋区の協議員会というものに出席する。二〇〇八年四月から二〇一〇年三月までの二年間、私はこの協議員というのをやっ
た。何をとぼけてんだろうというようなことがいくつもあったので、二〇一〇年三月三十一日に長野の夢庵という食堂でM君を相手に、録音機をテーブルに置
き、腹にたまった泥を吐き出した。うんうんとひたすら聞き役をやってくれるM君を相手に、ほとんど一人でしゃべった。以下はそれを文字に起こしながら書き
加えたものである。
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協議員をやってる時に、これは書いておこうと思ったことにいくつかぶつかったわけだけど、ひとまずしゃべってみようかと思った。しゃべってうまくいくか
どうかわかんないけど、今の状態は一言で言うと、くたびれちゃって気力がねえ状態なんだ。
協議員会とは関係ないが、パソコンに自動バックアップのソフトを入れて、これでバックアップは万全だと思ってたら、逆にやられちゃって、教材を四万行以
上パアにした。手違いで内容を消した直後に、万全のバックアップソフトが空っぽのファイルをさっさとバックアップ先にコピーしちゃった。冬の間になるべく
いっぱい教材を作っておこうと思って毎日作っていたんだけど、ほぼひと冬分の仕事がすっとんで、しょげちゃった。その頃から書くっていうことをやるとすぐ
くたびれちゃってさ、こりゃ駄目だって思って、なんにもしないで寝てる日が多かった。
女房に言われて健康診断を受けてみたら、肝臓の数値で、ガンマなんとかっていう数値が異常だから医者に行けという通知が来た。三〇〜一五〇くらいが正常値
のところ四〇〇あるっていうんだ。まだ医者には行ってないけど、ろくでもねえことが結構多くてさ。
鋳物師屋の最後の協議員会の議事録もやらなきゃと思いながら、全然やる気になれなくて放っておいたが、いくらなんでも四月に入ってからじゃ間抜けだか
ら、やっとゆうべ朝までかけてやった。協議員会でやってきたことは、しばらく放っておいて、ちょっと距離を置いて見た方がいいかもしれないっていう迷いが
あるんだけど、まだ気持ちが「生」なうちにひとまずハリマオの原稿としてやっちまおうかと思って。
小島に住んでたときは、常会の役なんかみんな女房にやらせておいて関心がなかったな。常会長って役が回ってきたときは自分でやったこともあったけど、他
は基本的には女房まかせだった。鋳物師屋へ引っ越してきても、やはり村の行政なんてものに関心はなかった。村の役ってのは、育成会だとかさ赤十字なんとか
とか婦人消防とか公害監視員だとかなんだかんだといっぱいあるんだ。そういうのも何をやってるのかまるで知らないままだったし、知ろうという気もなかっ
た。基本的には市がこれをやれって言ってくるものを村はやってるだけなんだろうと思う。例えば、千曲川クリーン作戦とかってのもあってさ、何やるのかって
いえば、いくつかの村が合同で千曲川のゴミを拾って歩く。空き缶とかビニール袋とかペットボトルとか拾って歩く。これも村が市にやらされてやっているらし
い。
千曲市はプラスチックやビニールみたいな合成化学製品の製造販売の野放しにもの申すなんてことは一度もやったことはない。散乱するゴミを拾って歩かせる
なんて、対症療法みたいなもんだ。解決策じゃねえ。一度大水が出てみなよ、コンビニやスーパーのビニール袋だのペットボトルだの拾って歩いてどうにかなる
わけがないほど葦や芒や木の枝にひっかかったり、岸に打ち上げられたりしている。拾ったごみは、多分あれは焼却処理だな。「汚れたプラスチック」に分類さ
れるんだろう。泥のつまった空き缶なんかはどう分類されるのか知らないけど、多分、土の中へ埋めちゃうだけなんじゃないかな。
「汚れたプラスチック」もそうだけど、「燃えるごみ」ってのも問題だな。「燃やして問題ないごみ」じゃなくて、「燃えるごみ」って分類意識が野蛮だと思
うな。この間、うちで使ってる「燃えるごみ」用のごみを容れる容器が置いてあって、長靴が飛び出していたので、「なんだこれ、なんでこんなものを『燃える
ごみ』の中に入れるんだ」と女房を呼びつけたら、市のごみの分別表によると、破れた長靴は「燃えるごみ」に分類するようになっているっていうんだ。その分
別表に従わないと市がごみを持って行ってくれないというんだ。俺と女房の話を聞いていた娘の友達が、「CDやビデオテープなんかも『燃えるごみ』だよ」と
言った。コーキングの空き容器なんかも、「燃えるごみ」だと言う。いくらなんでもひどくないか。焼却炉や溶融炉なんか、どこも引き受けたがらないのは当た
り前なんだ。
泥あげというか、せぎざらいというか、川掃除というか、あれも今は市から言われて村がやってる。ごみ収集の日のごみ当番とか。村の人間が村の人間を監視
するために立ち合いをやってる。ああいうのも市から言われてやってるんだと思うな。
こまかい用事や役は、小島にいた頃は、女房ができることは全部女房に押しつけておいたんだ。自分で家を自作して、引っ越した後もそうだった。スポーツ少
年団で子供達に指導するだとかなんだとか、お前はそういうことを何もやらないっていうような文句を言われたこともあったけど、やっぱりそんなもん俺は何も
やりたくなかったわけ。
鋳物師屋の協議員を二年やったけど、積極的に関わりたくないんなら、ひたすら黙っていればいいわけ。ただ出席だけして二年過ぎるのを待ってればいい。ほ
とんどの協議員がそうやってる。それやってれば一番楽だとわかってるし、俺も本来ならそうやってたはずなんだけど、結果的には結構発言しちまった。元のス
タンスが崩れちゃったんだけど、それは中区のごみの焼却溶融炉建設に反対したってことがあったからだ。
中区に二つのごみ処理施設の建設が予定されたのは、市長から中区の区長に話があったからだ。生ごみ処理の施設とごみの焼却溶融炉を両方とも中区の土手の
そばに作るっていう計画だった。溶融炉の方は、川中島平の広い範囲からもごみを集めてきて焼却溶融するでかい施設なんだ。なんで千曲市が長野市のごみまで
処分する場所にならなきゃならねえのかって思ったけど、これは国のいいなりになって、既存の市や町の行政組織から離れたところに、長野広域連合っていう別
組織ができたせいだ。これは市町村の住民からすれば一種の「お化け」だ。
焼却溶融炉については、長野広域連合から千曲市が施設の建設地を押しつけられたってことだ。それで、Wという男が中区の区長をやってた頃に、宮坂博敏っ
ていう市長からWに話があった。その後何代にもわたって、中区の区長たちがそれを住民に伝えないままでいた。内緒の話にして進めていたんだ。区長たちの中
には、建設候補地の地権者で、土地がいい値で売れればもうかったはずの人もいる。息子たちが百姓をやらねえとか、東京へ行ったまま嫁さんもらって勤め人
やって暮らしてるとかさ。田舎で年寄りの夫婦二人ででかい家に住んでる家もある。ご本人たちも百姓なんかやりゃしねえんだよ。畑やたんぼなんか人に貸して
ある。土地がいい値で売れるもんなら売りたいってのが底流としてあってさ、Wのところに市長から来た話ってのは歴代区長たちにとってはおいしい話だったわ
けだ。土地が売れるぞっていう歴代区長たちの思惑と市長や環境課の思惑が噛み合って、市長、環境課、区長たちの間で青写真はできていたけど、区民たちは何
も知らないままっていう状態が何年も続いていたんだ。
信濃毎日新聞に、中区に焼却溶融炉と生ごみ処理施設が建設予定になっているという記事が出て、村の人たちは初めてそんなでかい施設の計画があるってこと
を知った。新聞にこんなこと書いてあったって、俺んちへ妹が記事を持ってきて、俺も初めて知った。
中区の人から話を聞いたら、村の人たちはこんなでかい施設だなんて誰も知らなかったというんだ。後で中区の総会の議事録を読んでわかったんだけど、Wな
んかは、生ごみ処理施設のことを、「ごみ処理場」って言ってる。前後を読むとちょっとした掘っ立て小屋程度のものとしか受け取れない感じのしゃべり方だ。
小さいものかと思ってたらとんでもねえってのが、村の人たちがびっくりしたことなんだ。村の集落は建設予定地のすぐそばにある。地理的には中区は市のほぼ
中心地だから、風のない日は、千曲市のほぼ全域にまんべんなく焼却・溶融の煙が届く。夜中に風のない日って、このあたりは結構多い。俺は、夜中じゅう起き
てることが多いから、夜眠っている人たちより、そのことはわかってる。夜中に風が止まる日っていうのは、本当に多いぜ、この辺は。そういう日は、上に登っ
た煙は冷えればそのまま降りてきて、地べたを這う。家の高さなんてせいぜい五、六メートルだから、焼却溶融炉の近くの家はまるごと煙の層の中に漬け込まれ
る。俺は、薪ストーブを焚いてるから、風のない日の煙の挙動については、多少くわしいんだ。
広域連合っていうお化けがおつに澄ましたような行政に、生ごみ処理の臭いだとか汚れたプラスチックを燃やしたガスを吸わされるなんて馬鹿な話だと思って
さ。春から秋にかけて、すぐ風下になる新田の方にも住宅地が広がっているし、なんでこんなところにでかいごみ処理施設なんだって、普通は誰だってそう思
う。姨捨なんか観光客が来るけど、姨捨に登れば、すぐ目の下にごみ処理施設が見える場所だ。俺の家も建設予定地に近いし、長野広域連合なんていうえたいの
知れない行政組織が勝手に決めて、市や村に押しつけようとしている構図が気に入らなかったし。長野広域連合は、あちこちの市や町の議員や、行政の言いなり
をやる「学識経験者」の寄せ集めだが、中心メンバーは長野市長とその取り巻き議員だ。そういう「つらだけお上品ども」が国の手先をやって、国から広域連合
を作れと言われて作ったんだ。市や町から離れたところに行政組織を作れば、住民は文句が言いにくくなる。市にだったら割と文句も言いやすいが、市よりも偉
いみたいな行政組織を「雲の上みたいなところ」に作って、住民が文句が言えないようにしたのが広域連合っていうもんだ。小泉の時代に出たお化けだ。そこで
ものごとを決めて、市や町に押しつけるってやり方だな。あたかも「地方」が「自分たちで決めたかのような形」にして、国が末端の市や町に押しつけるための
ものだ。広域連合なんてのは、押しつけ合いの内輪もめを市や町や村にやらせて、町や村の力を削ぐためのものだとしか思えない。
溶融炉なんてものも、小泉の時代に国の役人が考えたものだ。溶融炉の原形は溶鉱炉だ。そもそもは鉄鋼メーカーや重工業用機械メーカー向けの小泉の不況対
策の一つだ。ごみを焼却した後の灰を溶融するように国の役人が地方行政に通達を出せば、まだ使える焼却炉を叩き壊して、新たに溶融炉が売れるっていう寸法
なんだ。長野広域連合の連合長は長野市長と同一人物で鷲沢正一だ。炭平っていう建築材料会社の実権者だが、長野県の大きい工事のセメントはあらかた炭平の
帳簿を通ってるって話も聞いた。鷲沢はビルだの道路だのダムだの、古いものを壊してやたらに新しいコンクリートのものを作る。コンクリートを使うものを作
れば、自分がもうかるんだからさ。長野なんか今になっちゃ遊びに行く気にもならない。コンクリばっかりで、面白くもなんともない。あんなところへ遊びに行
くくらいなら東京へ行ったほうがましだ。鷲沢は長野をほんとうにつまらない町にしたな。
県議会は土建屋の集まりで、土建屋が議会を使って自分たちの仕事を作ってるが、鷲沢がやってることも何の変わりもない。土建屋と違うのは、鷲沢が商人
だってことだけで、議会や広域連合を使って自分のもうけを作ってることでは同じだ。長野県では田中康夫が負けてから、この構図が復活してる。
そういう構図でごみ焼却溶融施設を住んでるところの近所に押しつけられるってのも嫌だったが、それよりももっと気に入らなかったのが、中区の区長たちが
住民に知らせないまま、こっそりとものごとを進行させていたことだった。住民を馬鹿にしてやがるんだ。
塾で使っている印刷機で印刷したビラを配り始めたら、夜中に脅迫電話みたいなのがかかってきたりした。「おめえ、塾やってるんだってな。この土地でやっ
ていかれなくなってもいいのか」なんて電話が来た。「つぶせるもんならつぶしてみろ」なんて脅迫電話に言い返したりしてた。家の前に俺が配ったビラにカミ
ソリの刃をくるんだものが置いてあったりもした。
たちの悪いいやがらせは、中区の中でもあった。焼却炉なんかとんでもないと言って反対し始めた人が、田植えの前に稲の苗を苗床からほぐすために、川から
田に水を揚げるポンプを置いておいたら、そのポンプのガソリンタンクに石油が入れられていて、ポンプのエンジンがかからなくなっていたってこともあった。
俺の畑では、雨水を溜めるドラム缶の中に、死んだ子猫が入っていたことがある。親猫に連れられて、子猫が畑を散歩したりすることはあるが、ドラム缶の高
さに子猫が自分から飛び込むなんてことは考えられない。誘致派の者が子猫を殺して俺の畑のドラム缶に放り込んだんじゃないかと思ったな。
生ごみの処理施設のことは聞いたことはあるが、焼却溶融炉のことなんかまるで聞いたこともない、寝耳に水だっていうのが中区の村の人たちが言ってたこと
だ。ろくでもねえなと思ったんだ。
焼却溶融炉については、千曲市の環境課と長野広域連合が一緒になって説明会をいくつか開いた。溶融炉ってのは何なのかと思って自分で調べたりもしたが、
ごみを燃やした後の灰をさらに千数百度の高温で溶かすっていうんだ。灰を溶かしたものを水で急激に冷やしたやつをスラグっていうんだが、それを最終処分場
に埋めるっていう方式や、スラグを路盤材にしたりする方式がある。
藤沢だったか、スラグを使った路盤材の下から亜鉛だか鉛だかの数値が、桁外れの濃度で検出されたことがあったみたいだ。犯人は荏原製作所っていう溶融炉
メーカーだったかな。
溶融炉にはごみを燃やす熱で発電するタイプとか、いくつもタイプがある。溶融炉が出始めた頃は、やたらあちこちで爆発事故が起こってることも調べてみた
らわかった。長野広域連合が国に言われて作ろうとしてるのは、燃焼後の灰を溶かしてスラグにし、最終処分場に埋めるって方式で、須坂市が今でも最終処分場
の候補になってる。最終処分場は、十五年だったかの周期で町や村の持ち回りになってる。バイトでゴルフのキャディをやった友達がいて、俺が聞いた話では、
長野市が大岡村と合併したのも、スラグの最終処分場を大岡村に押しつけるためなんだそうだ。友達は土建屋がゴルフをやりながら話したのを耳にはさんだんだ
ろうと思う。
ごみの焼却や溶融については、いろんな人がいろんなこと言ってるから、本なんか読むと何が本当なんだかわかんなくなるけど、それは明らかに嘘でしょって
いうのもある。千曲市の環境課が言ってるのがそうなんだ。環境課は何を言うかっていうと、「安全です」って言うんだ。しゃあしゃあとそう言ってる。最新の
技術で、千数百度っていう高温で処理するからダイオキシンは出ないと言ってる。溶融炉メーカーのパンフレットに書いてあることを、行政がそのまま受け売り
で言ってる。ダイオキシンは出ないっていう宣伝文句で溶融炉を売っておいて、実際は出てるっていう事例はいくつもあるが、単発的に地方新聞の記事になるだ
けだ。あちこちの地方新聞の記事を読んで、問題を抽出して取材するのは雑誌やテレビの仕事だと思うが、雑誌やテレビはほぼ死んでる。
俺が問題にしたのは、ダイオキシン一つじゃなくてさ、焼却過程や溶融過程で「何が出るかわからない」ってことだ。ごみなんだから、何がどんな順番で焼却
炉の中に放り込まれるかなんてわからない。今の時代は、子供のおもちゃなんかに電子基板みたいなのが組み込まれているものがいっぱいあるが、ああいうおも
ちゃも壊れたら「汚れたプラスチック」か「燃えるごみ」だろう。電子基板に何が使われているかまで調べて、焼却温度や溶融温度での他の物質との化学変化ま
で確認した上で焼却炉に放り込んでいるわけじゃない。というより、ごみなんだから、順列組み合わせがありすぎて、調べようがない。
俺はほぼどうでもいいんだ。俺が煙を吸うことはどうでもいいんだ。毎日、煙草の煙も吸ってるし、車の排気ガスを吸うのもまるで平気だ。だけどさ、うちの
前の公園なんかで、親が小さい子を芝生の上で遊ばせているのなんか見たりするとさ、どうも気持ちは複雑になる。うちの孫も体が小さくて、あんまり丈夫じゃ
ないしとか。気持ちが複雑になる。市の環境課のやつが蛇みたいな顔して「安全です」なんて言うと、何でたらめ言ってるんだって思うんだ。
千数百度って温度で灰を溶かせば、気化する金属もいっぱいある。燃焼や溶融の過程は化学変化なんだし、温度がちょっと違うだけで化学変化自体も違ったり
するわけだし、プラスチックだっていろんな特性を持たせるために、薬品を混ぜ込んであるわけだし、実際の溶融過程の化学変化の詳細なんかわかりっこない。
溶融すれば気化する金属はぐんと増える。焼却よりずっとたちが悪い。野蛮な話なんだ。いかにも小泉の行政がやりそうなことなんだ。
製品を作る過程での化学変化だってどの程度突き止められているのか知らないが、例えば、この薬品をこの温度でこう混ぜるとこういう特性のプラスチックに
なるってことがわかっただけで量産されてるケースが多いんじゃないのかねえ。その程度の製造と販売が野放しになってるんじゃないか。新しい特性のプラス
チックができたってことは、それまで自然界になかった物質ができたってことなんだが、そういう新しい特性ってのがうじゃうじゃあって大量消費されてる時代
じゃないか。そういうひとつひとつの特性を作り出す時は、製造過程と消費過程までしか考えに入れてない。消費後の処分過程まで考えて作っているわけじゃな
い。俺がこういうことを言うことの理由って、子供の頃に魚と遊んだ川を見ると、今、生き物がいないってことだ。ただ単にいないっていうんじゃなくて、魚や
虫が住めなくなってる。
原油から見てナフサとかが二次製品なら、そういう主な原料から見てプラスチックが三次製品になるとして、それを焼却した灰を溶融してスラグにするんな
ら、スラグは四次製品になる。特に、三次から四次になるときに、要するに何が起こるかっていえば、「何がどの順番で混ざり込んでくるか予測もつかない」っ
てことだよ。ごみなんだから。「汚れたプラスチック」とか「燃える」っていう分類でいっしょくたにされたものが、何がどの順番で炉に入ってくるかわからな
い。だから、何ができるか、つまり焼却炉の煙突から何が出てくるか、あるいは最終処分場に何が溜め込まれることになるかなんて、本当は誰にもわかっていな
い。何が「最終処分場」かよって思う。そんなもの「最終」なわけがない。どうせコンクリートで囲うんだろうが、コンクリートなんて、その語と違って、もろ
いもんだぜ。酸性度の強い物質と水気があれば、思いもかけずに短時間にぼろぼろになる。囲ったつもりが、十年や二十年で自然界に流れ出すなんてことは当た
り前に起こることだ。東京都の山の方で、なんてったけかなあ、土佐出身の絵描きがごみの処分場の反対運動やって、癌になって運動をやめた村がある。日の出
村って言ったっけか。石原慎太郎が反対運動をつぶしたという話だが、あそこも流れ出したんだ。
千曲市の環境課は、「安全です」なんて言えるはずがない。有害だと決めつけることができないっていうんなら、それ以上に「わからないもの」を「安全だ」
と言えるはずはない。ごみの焼却溶融処理の過程ってのは、原子力発電の処理過程よりずっとわからないことだらけのはずなんだ。俺が言ってたのは、わからな
いものは「わからないって言え」ってことだ。わからないものを「安全です」なんて言うのはでたらめだということだ。溶融炉メーカーのパンフレットの宣伝文
句そのままに行政が「安全だ」なんて言ったら犯罪だ。この小役人が、「安全だ」なんて言い切っちゃってるぜ、いいのかよって、説明会に行くと思ったね。
長野広域連合なんてものを作る作り方も、市の行政の「安全です」もでたらめなんだけど、一番の問題は、区長たちが区民に建設計画の正確なことを何も知ら
せないで、内緒で市の行政と話を進めてたってことなんだ。区長をやった一人のMTの言いぐさでは、ごみ処理施設誘致は「民主的な手続きを経て決議された」
と言うんだが、お笑いぐさだよ。施設の規模だとか、どういう処理方法だとか、どの範囲からどれだけの量のごみを集めることになるんだとか、生ごみは千曲市
が主体だが、焼却溶融炉は長野広域連合が主体だとか、長野広域連合ってのはどういうふうにできた組織だとか、肝心なことについては区長たちは一切何も区民
に話してない。肝心なデータを隠しておいて、「民主的な手続きを経て」と言うんだから、ちゃんちゃらおかしい。馬鹿くさく、あほくさいんだよ。
「決議された」ってのはどんなことかと思ったら、Wという区長が中区の総会で「ごみ処理場」としてしゃべった後、五、六人がぱちぱち拍手したというだけ
のことなんだ。この五、六人てのは、区民に情報を隠して内緒で市と話をしてきた歴代区長や、そのとりまきの利権の欲しい設備屋たちだ。区民に説明もしない
ままで、とりまきたちのぱちぱちの拍手で「決議」だってわけだ。
ろくでもねえってんで、ビラを配り始めたんだが、ビラには区長どもや市長への攻撃をかなり書いた。「こんな者が小学校の校長なんかやるから、学校が腐っ
ていくんだ」とか、「腐れ区長ども」とか「市長の嘘」とか書いた。(笑)今の時代は、腐れどもが区長をやってるなんてことはいくらでもあるというのは、そ
の時はっきりわかったことだ。今の時代は、住民が区長さんにおまかせするなんてことやってたら、何が起こるやらわかりゃしねえ。中区の腐れ区長どもは、村
のことを考えていたんじゃねえ。自分の土地を売ることや土建屋の土地の転売の都合を考えていたんだ。「民主的な手続き」云々を言ったMTなんか、処理施設
の候補地の地権者のくせに、市の「建設地検討委員会」の委員をやってたんだ。土地を売りたいやつが、建設地の「検討」をやってたんだぜ。(笑)あほらしく
てものを言うのもいやになるが、言わねえでいると、こういう連中はつけあがるんだ。小学校の校長あがりだってんで、市の環境課だの議員だのが「学識経験
者」とかなんだとかでおだてて使うんだろうが、いったい何の学識がMTにあるってんだよ。世間知らずで、父兄たちから評判が悪かっただけの校長なんだ。地
権者のくせに建設地検討委員会の委員だってさ。こんなみっともねえ真似ってあるかよ。どこに出したって恥ずかしいことだ。
こんなでかい施設の誘致があんな形で決められていたのかっていうのが村の人たちがびっくりしたことなんだ。こんな馬鹿な話はねえってのが、俺がビラを
配った後で中区で起こった反対運動の核にあったものだよ。八十歳のじいちゃんが、反対する会を作って頑張った。俺なんか、上っ調子のことをいっぱい書いた
りしたけど、反対する会の人たちは着々とやっていたな。三十代、四十代の中区の男たちは何もできなかったが、七十代、八十代のじいちゃん、ばあちゃんはい
いな。腹が据わってる。着実だよ。全然かなわねえなって思った。
村の人たちが区長たちの内緒話をひっくり返したのは、確か総会での挙手による多数決だった。中区には規約ってものがあって、大事な問題は臨時総会を開い
て決議するっていうような項目がある。総会や臨時総会がどう機能するのかを書いてある。それがあったおかげで、中区は住民の意思として市に白紙撤回しろっ
て決議できた。市の行政や区長どもの腐れ区政を住民が直接にひっくり返すことができた。この意味は小さいもんじゃない。住民の意思がはっきりと形になった
んだ。今まで区長たちがやってきたことはでたらめだと、自分たちの意思とはまるで違うことだと。それを形にしたんだ。
俺がやったことは運動じゃねえな。組織的に動いたんじゃねえ。ビラを配って歩いたから、運動不足解消にはなったけど。(笑)
反対する会のじいちゃんとは、畑に行く途中で立ち話したりした。村の様子がよくわかった。
ビラに関しては、M君に手伝ってもらったりしながら、俺は勝手に配ってた。本当にものごとを決めたのは、中区の村の「普通の人たち」だ。その時に中区に
規約ってものがあったことがよかった。
建設予定地は、千曲市のはずれに移ったわけだけど、粟佐や屋代の人たちは、中区と同じように、長野広域連合が勝手に決めた計画なんか蹴飛ばせばいいん
だ。広域連合なんてのは、住民からすればやくざなもんだ。蹴飛ばしていいんだ。まあだけど、それは屋代や粟佐の人たちがやるべきことだろうと思って、俺は
ひとまずごみ処理施設の問題からは手を引いた。あれやってると、教材づくりとか塾の仕事とか、本当に何もできなくなっちゃうんだ。
そんなことにしばらくかかずらっちゃったので、鋳物師屋の協議員になって、鋳物師屋って村を見たら、基本がでたらめなんだ。中区に起こったことが鋳物師
屋で起こったらどうなるんだろうと何度も思ったな。鋳物師屋はあぶない村だよ。鋳物師屋には規約ってものがない。どういうふうにすれば、村の意思というか
住民の意思が形になるのかが何も規定されていない。規約がないっていう点だけで言うと、鋳物師屋って村は中区よりずっと遅れた村だ。所帯数は中区よりずっ
と多いんだけどさ。
鋳物師屋ではものごとがどう決まっていくのかっていうと、まあこれは鋳物師屋の人から聞いた話だけど、長老たちが決めているらしいんだ。長老ってのは、
実質は区長経験者や区長ってことなんだろうけど、じゃあ、長老ってのは誰と誰なのかというと、俺みたいによそから来て住みついた者には全然わからない。長
老たちが何をどう考える人たちかってことも全然わからない。わからないところで、わからない人が決めたことに区民は黙って従っていればいいという構造だ
な。協議員会で何が話されているかなんてことも、普通の村の人たちは誰も知らない。区長が独断で決めることもあるんだが、そういうものも長老にあらかじめ
お伺いを立ててあるのかな。長老が駄目って言えば、ひっくり返るんだろう。
中区だって基本的にそういう構造だよ。少なくとも、腐れ区長どもは、それで区民をこませると思っていたんだよ。だけど、中区では区民がそれをひっくり返
した。その時に規約ってものがあったのがよかった。鋳物師屋には規約がない。規約がなければ、相当のでたらめができちゃう。それが俺が目撃したことだな。
たまたま、Tって区長の代だったが、俺は見たものは見たって言おうと思ってさ。
鋳物師屋のTって区長は根回しに来たのか、何の用で来たのがよくわからないんだけど、俺が協議員をやり始めた頃、俺んちへよく来た。帰った後で、何の用
で来たのかわからないってことが続くんで、庭で話すようになった。うちの庭で言い合いになったこともある。よく覚えているのは、Tが「協議員なんてもの
は、協議員会に出てきて思いつきをしゃべってるだけだ」とか、「総会はセレモニーだから」とか平気で言ってたことだ。ふざけんじゃねえよってことを平気で
言ってんだ。俺を何かの味方だとでも思ってたのかねえ。俺は病人や子供の味方はする気があるけど、区長なんてものの味方を「あらかじめ」やる気は、「あら
かじめ」ねえんだっての。協議員の俺に向かって、「協議員なんてものは」っていったい何を言いたいんだっての。(笑)
総会=セレモニー発言は、協議員会でもTはしゃあしゃあとやってたな。鋳物師屋ってとこは、公の会議でそんな言いぐさがまかり通るところなんだ。総会が
セレモニーなら、なんで協議員がわざわざ欠席者から署名捺印のある委任状を集めるなんて手間のかかることをやらされなきゃいけないってんだよ。総会が議決
の場だから、委任状を集めるんだろうが。
Tの後の、MNって区長は、この人はこの人で、「協議員会が最高の議決機関だ」なんてことを協議員会で平気で言ってた。「違うでしょ」って俺が言うと、
「協議員の自覚を高めるためだ」なんて言い訳にもならないことを言ってごまかしてた。
総会ってのはいったい何なんだ。何のための委任状なんだ。Tの言う通り、総会は実態は確かにセレモニーになってる。つまり、駄目になってる。鋳物師屋の
長老たちが、総会をただのセレモニーにしちまったわけだよ。TやMNの言うことは、現状が正しくねえのに、現状だから正しいって言ってるだけだ。あの人た
ちの言ってることを煮詰めればそれしか言ってない。
馬鹿らしいから、ほとんどの区民たちは総会に出席しない。鋳物師屋には四五〇世帯くらいあるが、五十人くらいで総会ってのをやってる。区民に見放されて
るのをいいことに、セレモニーをやってんだ。ままごと民主主義だ。共産党と変わりやしねえよ。馬鹿どもが頭に血が昇って、戦争なんかやりやがった結果が、
戦後のままごと民主主義だ。もうしっかりと腐ってるんだ。
鋳物師屋には規約がないから、総会が最高の議決機関であるという一行すらないわけ。これがなければ、区長は基本の基本から間違うことができる。(笑)笑
いごとじゃねえんだよ。大笑いだよ。(笑)
長老の思いのままやら、酋長根性の野放しがまかり通ってる。協議員だって自分たちでものごとを決めるんだなんて思ってない。みんなしっかりと躾けられて
てものを言わない。ものを言うのが二人三人いるにはいるが、言うことが大変な低レベル。(笑)
中区で起こったような間違いは、鋳物師屋でも十分に起こりうるなというか、鋳物師屋で起こったら、もっと始末におえないなと思った。区民が間違いを間違
いとしてひっくり返すことは、当然であたりまえのことだが、鋳物師屋ではそれが中区より難しいんじゃないか。気持ち悪い村だよ。(笑)
Tが区長をやったときに、協議員会に断りもなく勝手に「エレベーター設置委員会」ってのを作って、入札もなしに勝手に業者を決めたり、工事をどんどん追
加して金額をふくらませたりしたってことがあった。「最終的な金額」としてふくらませた予算より使った金が百万円以上多いってこともあった。実際に使った
金額の合計額が決算書のどこにも書いてないっていうようなこともあった。実際に使った額ってのは、俺がたまたま見つけるまで、誰も指摘した者がいない。協
議員には元銀行員だっているんだぜ。俺みたいに数字に弱い人間ばっかじゃないんだぜ。
俺は公民館にエレベーターをつけるなんてことには何の興味もないんだけど、協議員会に断りもなく勝手にエレベーター設置委員会なんてものを作ることはで
たらめだと思った。市や町から離れたところに長野広域連合を作るっていうやり口と同じだ。これまでのところでも、市は住民から離れたところで勝手なことを
やってるのに、その市からさらに離れたところに別の行政組織を作るってのは、住民から遠いところに内緒話の密室を作るっていうことなんだ。それと同じこと
を四五〇軒ばかりの鋳物師屋区でやったんだから、あきれた話だよ。筋の通ったことなら、鋳物師屋なんか全部公開してやって十分にやっていけるはずなんだ。
Tっていうにこにこづらの区長は密室を作ったんだ。密室を作るやつらは、旧ソ連でもアメリカでも、密室から出てくるとみんなにこにこづらしやがるんだ。今
の時代、日本でも、小学校の校長なんかに多いぜ。(笑)
入札はしたのかどうかってのも俺が質問して、やってないってわかった。俺はさ、絶対に入札しなきゃいけないとは思ってないんだ。仕事の質ってものがある
からさ、とにかく安ければいいってもんじゃない。「村の大工」ってものがいて、あいつはまともな仕事をするってわかってる場合は、やたら高くなければ、そ
こに施工を依頼するっていうのは悪くない。だけど、入札しないならしないで、入札しない理由は区民に説明すべきじゃないか。動かすのは区民の金なんだから
よ。
なんで入札しなかったのかって聞いたら、YT建設は普段公民館の蛍光灯を取り替えてくれているとか、入札するより安いとか、理由にもならないことばかり
Tは言うんだ。入札するより安いかどうかなんて、入札してみなければわからない。わからないから入札なんだ。
YT建設は、大小さまざまな鋳物師屋から生じる仕事を一手に引き受けている。運動会のテントを買うとか、公民館の壁紙を貼り替えるだとか、外階段のペン
キを塗り替えるだとか、本来大工の仕事じゃないものまでみんなYT建設が見積もりを出してる。「限りなく癒着に近いグレー」だな。(笑)なんでもかんでも
YT建設に頼むっていう慣例はよくない。そうすると区長が楽だってのはわかるけどさ。
そんなことになってるのも、歴代区長が協議員会ってものを粗末にしてきたからなんだ。
TKさんが言ってたけど、千石では三百万だったか三百五十万だったかでエレベーターが設置できたというんだ。YT建設の見積もりは五百万だった。全然安
くない。YT建設は、つきあいのあるところからエレベーターの機械を調達したはずだ。値引きがあれば、YT建設は当初の五百万のうちでもうけ幅を広げられ
る。そんなこともすべて鋳物師屋の協議員会はノーチェックだ。少なくとも、YT建設が五百万という見積もりを出したということくらいは区民に知らされるべ
きだが、知らされていない。
協議員は常会から出てるから、協議員に知らせれば常会の人たち、つまり区民に知らせたことになるんだが、これも理屈だけの話なんだ。俺がいる十二常会っ
てのには、「常会」ってものがない。「常会」って、常の会ってんだから、要するに寄り合いだわな。あそこは暗いから防犯灯が要るんじゃないかとか、どこそ
こで猫がいっぱい子を産んだとか、どうもあそこは草がぼうぼうに茂ってるけど、俺たちで刈っちまおうかとか、お茶のみ話や世間話で日頃から集まる寄り合
いってものがあればいいんだが。それがない。新しく住みついた人たちの「常会」だから。
常会の総会で、寄り合いをやるのがいいんじゃないかって発言したことがあるんだけど、「時期尚早」だと言われて、お流れになったことがある。そんなも
の、「時期」なんか考える必要なんかない。「尚早」なんか考える必要がない。なんでだか、考える必要のないことを、皆さんは考えるみたいだ。「常会」なん
か気楽に始めていいことだと思うんだけどな。義務にしなきゃ気楽に始められるはずだ。
寄り合いがないから、協議員会に出ても、常会の人に知らせることができない。文章で書いて配って歩くってテもあるけど、協議員会の書記をやらされたりし
て全然手が回らなかった。
鋳物師屋には「いもじや新聞」ていう新聞がある。協議員会でどんな話が出たか、「いもじや新聞」で書いてくれねえかなあと編集長をやってる協議員に言っ
たことがあるんだ。そしたら、編集長は「決まったことだけ書きます」って言った。なんで、途中経過は書かないんだって言ったら、区長、議長、編集長が揃っ
て「なんでもかんでも書くわけにはいかない」「そんなスペースはない」ってなことをムキになって言ってたな。
その日だったか、その前だったか、協議員の一人が川からユスリカって虫が大量に発生してるからなんとかしてくれって言ったんだ。鋳物師屋を流れてる川の
上流に丸善食品ていう会社があって、缶コーヒーなんか作ってて、川に大量にお湯を流してる。ユスリカの大量発生は、どうしたって丸善食品がくせえんだ。冬
なんか川が湯気たててるんだ。俺はよく川の中を覗くんだが、魚がいなくなってる。丸善食品のところで川が分岐して、新田用水ってのもあるんだが、こっちも
まったく死んだも同然の川だ。その川が俺んちの前を流れてる。冬なんか、鮒なんかが一箇所に固まってるところがあるけど、体に白い苔みたいのが生えてる。
川の底に描いたさむざむとした絵みたいだ。夏になると、昔は見たこともないような変な灰色の藻も生えてくる。こういう問題は、村の大事な問題のはずなんだ
が、TもMNも区長たちには解決しようという気はなかった。
東京から帰ってきたIさんていう人が、数年前に区長をやった時があって、川の温度を測り続けて、そのメモを俺に見せてくれたことがあった。その区長さん
もその数値はどこにも発表しなかったみたいだ。このIさんていう人が俺が知ってる限りでは一番いい区長さんだった。「いもじや新聞」も、このIさんが始め
た新聞だ。だけど、協議員会で出た話がひとつも載らない新聞になっている。Sっていう編集長が、「優等生区民」をやったおかげで、まったく骨抜きの新聞に
なった。
ユスリカの話が協議員会で出たら、その話を「いもじや新聞」で書けばいいと思うんだけど、編集長は「(協議員会で)決まったことだけ書きます」というん
だ。
十二常会の今年の総会で、鋳物師屋の協議員会ってのがどれほどでたらめかっていうことを書いたものを常会の人たちに配った。その中で、「いもじや新聞」
が協議員会で出た話を書かないってことも批判した。
そのことで、十二常会の常会長と言い合いになった。この常会長さんは、「いもじや新聞」の編集長のSって人と、村のお祭りのお神楽の仲間で、俺が仲間を
批判したのが不快だったらしい。俺のやったことを個人攻撃だととらえているんだ。「いもじや新聞はいい新聞だ」とか、「Sさんはいい人だ」とか言うんだ。
「根石さん、ああいうことを書くのはよくない」って言うんだ。俺もSって人が悪い人だとは思っていない。それどころか、区民として優等生だと思ってる。だ
けど、優等生だから駄目なんだとも思っているんだ。だって、新聞なんか編集して、協議員会で出た話を載せないなんて、それだけで駄目でしょ。肝心の記事の
はずだよ。いもじや新聞に載ってることは、なんとかというスポーツの大会で鋳物師屋が優勝したとか、和気藹々とみんなで区の旅行をやりましたとか、おまま
ごと記事ばっかりだ。協議員会でユスリカの話が出たってことは載らない。これ、ほんとにふざけた話なんだぜ。だけど、Sって人はそれでフツウなんだと思っ
てる。優等生なんてのは、そんな程度にフツウなんだ。
「いもじや新聞はいい新聞」だってことで常会長さんが言いたいことはわかるさ。新聞の存在自体はいいんだ。そもそも、新聞を発行してる区なんて、千曲市
には他にないんじゃないか。だけど、S編集長がやったことってのは、「なるべく知らせる」ってことでなく、「決まったことだけ載せる」ってことだった。こ
れは、俺、「なるべく知らせない」っていう区長側のやり方に迎合してることなんだと思う。協議員会としての自律ってものがない。Iさんがせっかく作った新
聞を堕落させてるんだ。
体裁だけ見れば、「いもじや新聞」は立派なもんだ。だけどさ、スポーツの優勝記事だとか、旅行の記事だとか、新年会をやりましただとか、なごやかにだと
か、満場一致でだとか、そんなことだけ載せて、協議員会で出た話を載せないってのは、おもちゃ記事で大事なことを覆って隠してるってことになるんだ。優等
生根性ってのは、そこで迎合するから駄目なんだ。区民の新聞を、区長に都合のいい新聞にしちゃうのが優等生の駄目なところだ。
数人のパラパラの拍手しかなかった総会の様子を伝えるのに、「鋳物師屋 区民総会 開かれる 満場一致で承認!」なんてタイトルのトップ記事を書いたり
しちゃうんだ。嘘こけってんだよ。俺はその場にいたんだ。何が満場一致か。数人のパラパラの拍手のどこが「満場一致」だってんだ。これじゃ中区と同じじゃ
ねえかと思った。中区では、それで大問題になったんだってことがわかってない。これじゃ中区や鋳物師屋の腐れ区長どもと同じ穴のむじなになっちゃうってこ
との自覚がない。
俺は、十二常会の常会長さんにははっきり言っておいた。俺はSさんの個人攻撃なんかやる気はない。区民に知らせるべきことを知らせないのが駄目なんだ。
新聞が区長の新聞でなくて区民の新聞だっていうんなら、協議員会の話の経緯を載せるのはあたりまえの話だって言っておいた。
常会長さんにはそう言ったんだが、ご近所だから、あんまり言い合いなんかしたくないんだ。だけど、個人攻撃なんて誤解だからさ。俺はSさんて個人には興
味がねえんだよ。区の小さい新聞を編集するのに、おもちゃ記事だけ載せて、協議員会で出た話を書かないのは駄目でしょって言ってるだけだ。
エレベーターのことに話を戻すけど、協議員会に断りもなしに、勝手にエレベーター設置委員会なんてものを作ったことはでたらめだってことと、入札をしな
かった理由がまともでないってのはもうしゃべったけど、工事を追加して金額をふくらませたってこともあった。
千石と較べれば高いけど、YT建設が出した見積もりはエレベーターの機械と設置の施工費で五百万だった。それが、臨時協議員会の後で(Tが?)正式に出
した書類を見ると、「滝沢さんよりの説明」って項目がある。「滝沢さんよりの説明」ってのをここに出すと、滝沢さんが「山の滝沢建設」だってのがわかって
しまうが、しょうがねえやな。「臨時協議員会報告」っていう公文書に出てるんだから。これまで、俺がイニシャルでしゃべってたのも、無駄な努力だったって
ことだ。(笑)
で、「滝沢さんよりの説明」は、「昨秋エレベーター設置の話を受ける。図面については池田さんに依頼する。総額についてはエレベーター設置(五〇〇万
円)と付帯工事を含めて七五三万円程度になる」っていうものだ。
この「付帯工事」なんだけど、エレベーターと全然関係ないような工事が含まれているんだ。公民館の屋根をなおすなんてのは、エレベーターと関係ないの
に、それが含まれてる。会議で使う座布団を納める棚なんてのも、なぜそれが必要なのか何の説明もない。
それで、二五三万ふくらんでる。この書類が出た時の区長はTで、代理区長はMNさんだが、書類の「出席者」のところも変だ。「臨時協議委員会報告」って
字の下に「協議題『公民館エレベーター設置に関する経過報告』」ってタイトルがある。その右下に「出席者」ってのがあるんだが、「区長、代理区長、協議委
員一五名、高橋前区長、滝沢さん」って字がある。高橋っていう前区長の名前や施工業者の滝沢っていう名前が出てて、区長寺沢の名前はない。その文書がどこ
から出たものかがわからない。つまり、文責者の名前がない。(寺沢さん、「ハリマオ」が印刷されたらお宅にお届けしますから、そのことをちゃんと説明して
下さい。文書の文責はいったい誰なんですか。なぜ明記しないのですか。)
ということで、またまた寺沢さんというお名前が出ちゃいました。(笑)要するに文書にあるべき文責者の名前がどこにもない。闇文書じゃねえと思うんだ。
協議員会で全員に配られたもんなんだから、公文書だ。俺がせっかくイニシャルにしといたのに、「あるべき名前がない」ような文書を出す区長の名前は逆に表
にするしかない。姑息な息づかいの文章だから、俺は寺沢喜孝さんが書いたものだと考えてるが、この文責不明の文書の存在が、寺沢という区長の無意識をよく
表してると思う。
エレベーターとは関係のない工事が「付帯工事」だったって話だが、その「付帯工事」で五〇〇万が七五三万にふくらんだだけじゃないんだ。Iさんが「エレ
ベータ委員会会長寺沢喜孝様、鋳物師屋区区長寺沢喜孝様、(写)副委員長宮坂軌義様」宛てに出したエレベーター関係の会計報告では、区が実際に使った金
は、八六一万二五〇円だ。ここでまた七五三万から一〇〇万円以上ふくらんでる。
このエレベーター関係の会計報告を見て、不思議な会計報告だなあと思うのは、実際に区が使った八六一万二五〇円という額がどこにも載ってないんだ。「建
築費(含エレベーター機器)七九一八〇〇〇円、設計代金六九一七〇〇円、事務費(コピー代)五五〇円」ていうのを俺が足し算して、八六一万二五〇円だとい
う数字になった。この数字がどこにもない。「支出の部」の他の項目は、「特別会計戻入」で、これは区の「特別会計取り崩し」があったから戻し入れただけ
だ。区からの実際の出費ではない。
エレベーター設置委員会なんてものを、協議員会に断りもないまま作っておけば、「特別会計戻入」っていう項目を会計報告の「支出の部」に入れられる。実
際に区から出て行った金額ではないものを、「支出」にできる。これが寺沢のミソであり、ノウミソなんだと思った。簡単に言っちまえば、数字をわかりにくく
できる。俺は、エレベーター設置委員会なんてものをわざわざ作ったのは、これが一番の理由じゃないかと思ってる。
話は一年以上さかのぼるけど、ごみ焼却溶融炉が中区に予定されてることに関して、隣村としての考えを形にして欲しいと俺が総会で要望したことがある。そ
のとき、一人でお説教みたいなことをしゃべりまくって、議長とグルになって一区民の声を流産させたのがこの寺沢喜孝っていうじじいだった。
エレベーターの会計報告で、実際に使った額を「流産」させるやり方は、区民の声を平気で流産させやがるようなやつのやりそうなことなんだ。俺はIさん
は、あの書式で寺沢に書かされたんだと思ってる。寺沢が、この通り書けばいいとIさんに言ったんだと思ってる。畑に行く途中でIさんがゲートボールをやっ
てるのを見かけると挨拶するから、今度実情を聞いてみようかな。俺は寺沢が区民の要望を門前払い式で葬り去った時に、このじじい、ろくでもねえと思ったん
だ。区民の発言の扱いがろくでもねえんだ。
俺が協議員の二年目をやったときのMKさんていう協議員は、俺が承知できないことを承知しないので、「区長はノイローゼになりそうだ」なんてことを言っ
た。そしたら区長は、「ノイローゼになりそうなのは、前の区長(=寺沢)だ」なんて言った。
やったことが筋の通ったことなら、寺沢喜孝前区長はノイローゼになる理由も原因もあるはずがない。俺が協議員会ででたらめを言ってるんなら、区長は寺沢
喜孝前区長を協議員会に呼んで、協議員全員の前で俺と直談判させればいいんだ。なんで、協議員会に断りもなく、エレベーター設置委員会を作ったのか、なん
で、入札もなく山の滝沢建設に決めたのか、なんで、エレベーター設置委員会が出した会計報告に、エレベーター関係の実質的な出費の額がないのか、すべては
寺沢喜孝前区長に説明責任がある。
総会で区民の要望を簡単に葬ったことや、協議員会に断りもなくエレベーター設置委員会なんてものを作ったことは、鋳物師屋の恥なんだ。この恥を切開でき
なかったのが、MNという区長の限界だった。だって、この恥を切開しなかったら、MNさんは寺沢喜孝っていう腐れと同じ穴のむじなになっちゃうんだ。その
自覚がない。
千石が三〇〇万だか三五〇万で設置したエレベーターってものを、山の滝沢建設が五〇〇万だと見積もりを出して、その金額を鵜呑みにした後、七五三万(お
めでたい額?)に膨らまし、それを「最終的な金額」だっていう書類を出したんだぜ。
「臨時協議員会報告」には、当時の代理区長MNさんの言ったこととして、「最終的な金額は七五三万でお願いする。九・一五の敬老の日までに完成させたい
ので、先日契約をさせていただいた」ってのがある。それが、MNさんの言葉として出ている。これはやたらに言い逃れはできないだろうと思うんだ。「最終的
金額」なんだから。
「最終的金額」がその後さらに一〇〇万以上ふくらんだってことより、もっとおかしいと思うのは、「先日契約をさせていただいた」だな。だってさ、協議員
が常会の人に聞かれて、協議員自身が何も知らないってことは変だということで開かれた説明会だったんだんだからさ。
実際はTKさんの糾弾会になったけど、本来は、寺沢が勝手に作ったエレベーター設置委員会で何がどう決まったのか説明しろという要請によって開かれた説
明会だ。寺沢は、区長であると同時にエレベーター設置委員会の委員長だった。その寺沢は、代理区長MNさんの「最終的金額」云々の話の時には、他の会議が
あるとかで協議員会から座を外して、後で戻ってきた。
エレベーター設置委員会で何が決まったか説明すべき臨時協議員会で、エレベーター設置委員会の委員長が座を外し、代理区長に「最終的な金額」を言わせて
る。「先日契約をさせていただいた」ってのも、代理区長に言わせてる。MNさんは、とんだ「代理」をやらされたもんだってことじゃないか。
やっぱおかしいんだよ。協議員が説明しろって要求して開かれた臨時協議員会なんだから、協議員会が納得してから、工事を発注すべきだろう。その前に発注
が終わってるってのは、どう考えてもおかしい。MNさんは、この時点で寺沢喜孝にハメラレテんじゃねえかね。敬老会に間に合わせることより、協議員会が納
得してから発注するってことの方がはるかに大事なことだ。
寺沢っていう区長が、エレベーター設置委員会ってのを勝手に作って、区の金の動かし方を勝手に決めてるってことは何度も感じたけど、この事例なんかはそ
れをはっきりさせてるんだ。
こういうことを考え合わせると、寺沢喜孝は「ポッポナイナイ」をやったんじゃねえかと疑われてもしょうがねえなと思う。最初の500万から「最終的な金
額」753万に膨らまし、「最終的な金額」よりさらに100万以上膨らましておきながら、本当の「最終的な金額」は協議員に報告してないし、会計報告にも
載ってないなんてことをやると、「ポッポナイナイ」を疑われても仕方がない。区長になった当日に、区民の声を流産させた時点で、こいつが基本がでたらめな
んだということははっきりしていたんだ。
総会は形式的なセレモニーでいいのかとか、委任状ってのは何の意味があるのかとか、規約がなくていいのかとか、規約がないからこういうでたらめをやっ
ちゃうんじゃないかとか、俺は協議員会でそういうことを言ったんだけど、そうすると、逆にこうあるべきじゃないかっていう理念みたいなものを言うことにな
る。協議員たちはそういうことにはまったく関わりたくないって顔をしていた。みんなして爬虫類みたいな顔して、ひんやりした空気を流してた。防犯灯の蛍光
灯を取り替えてくれっていうようなことを言うだけが協議員会だと思っているような人たちばっかりなのかねえ。腹の中は知らないが、やってることはそうだっ
た。
二年目の途中で、Nっていう協議員が、「もうあんたの言うことにはみんなうんざりしてるんだ」って俺に言ったことがある。
まあ、これには、前段があってさ、協議員会に諮りもしないで勝手に委員会を作るなんておかしいじゃないかとか、話がよくわからないから協議員が黙ってい
ればいつのまにか承認したことになってるとかってことを俺が言うと、区長は「その話はまた後にしてくれ」と言うわけだ。お言葉の通り、「また後に」話を持
ち出すと、区長は「お前は言うことを聞かない」と俺に言うわけ。承知できないことを承知できないと言うのがなぜいけないのかと言うと、Nっていう協議員
が、「あんたみたいなことやってたら、会社だったらすぐ首だ」って言ったんだ。そりゃそうかもしんねえ。(笑)
だけど、会社だったらって、協議員会は会社じゃねえだろうによ。会社は私企業っていうこともあるくらいで、ワタクシコンジョウで金もうけをやってるのが
「標準」だ。だけど、協議員会は金儲けだの利潤の追求なんかと関係ない。
このNってのが会社員だってのはわかってるんだけど、どういう会社でどういう役職をやってるのかなんてことは俺は知らない。まあとにかく、協議員会って
のは会社とは違う。Nってやつは、あんころもちと鼻くそは同じもんだと言ってるようなもんじゃねえか。違うのに。(笑)
そんなやりとりが、先にあって、「みんなうんざり云々」のNの発言があった。
自営業だろうが、会社員だろうが、公務員だろうが、職人だろうが、無職だろうが、村の協議員をやる場面では、自由にものを言っていいんだ。おかしいと思
うことをおかしいと言っていいんだ。このNってのは、会社員が上司に従うように協議員は区長に従えって言ってるわけだ。逆らうなって言ってるわけだ。ジユ
ウギョーの俺がなんでカイシャインのおめえにそんなことを言われる筋合いがあるってんだとは言わなかったけど、そんなふうに会社にしっかり躾けられた根性
を公の場で丸出しにして、猥褻物なんとか罪でつかまらねえのかよ。(笑)奴隷根性をさらけ出して恥ずかしくないのかよ。まったくさ、こんなのがいるから
「社畜」なんて言葉ができるんだ。「社畜」を標準にして、協議員ってものに当てはめようというんだ。あほたれが。この「社畜」は自分で協議員ってものをお
としめてることにまったく気づかないんだ。自分の言ってることをなんにも疑ってない。
ほとんどの協議員はものを言わないでおし黙っているんだが、二、三人よくしゃべるのもいた。そのよくしゃべる連中の理屈のレベルってのが、だいたいこの
程度のもんなんだ。俺一人が「おかしな奴」扱いされていたんだが、俺にしてみりゃ、おかしいのはオメエラだよって感じなんだ。数として向こうが多数派では
あるんだが。俺がオメエラ呼ばわりする連中ってのは、日本近代にいつの間にかできた「標準」にへいこらしてるだけなんだ。区長サイドで新聞の編集なんかし
てる優等生なんかが典型的だ。テンノーセーニッポンの縮図を見てるみたいだった。
村の区政みたいな小さなもんでも、中枢ってものが見えないようになってると、協議員てのはかしこまっちゃうんだな。見えないお化けは余計怖いみたいなも
んで。共産党かよ。
その中枢ってのにどうもお宮がからんでる。鋳物師屋の協議員は、お祭りに強制的に参加させられる。俺も見物だと思って参加させられてたが、二年目の秋は
さすがに馬鹿らしくなって出なかった。体調が悪かったし。お祭りに参加するっていっても、御神輿かつぐとか、太鼓を叩くとかじゃないんだ。そういうのは、
協議員会とは別にあって、協議員はお祭りの日に社殿に登って、神主が祝詞を唱える場でかしこまるってことをやらされる。神前結婚式ならぬ神前協議員会だ
ぜ。(笑)
お祭り自体は、豊作を祈るとか、昔ながらの農を基底にしたお祭りだ。俺は中村の生まれで、中村のお宮は八幡のおはちまんさんの枝別れなんだけど、鋳物師
屋のお宮はなんか違う系列のお宮という気がする。国家神道っていう尻尾が全然切れてねえ感じが強い。天皇制ってものと割とすんなりつながっているお宮なん
じゃないかねえ。明治の廃仏毀釈の頃からのものなのか、それ以前からの性質なのかよくわからないけど。
鋳物師屋って村には、お寺ってものがないんだ。鋳物師屋は廃仏毀釈を大まじめにやって、明治の時代にお寺をつぶしたんだと聞いたことがある。これって
さ、鋳物師屋って村が、当時の国家に向かって優等生をやったってことだ。鋳物師屋の気持ち悪さってのは、権力に向かって優等生をやる村の気持ち悪さっても
のじゃないかな。そういうところに根があるんじゃないかな。
この気持ち悪さってのは、濃い薄いの違いはあるけど、鋳物師屋だけのもんじゃない。千曲市の行政なんかも一歩近づいて見れば、気持ち悪い。ごみ処理施設
を中区へ建設することに反対していたとき、何回か市議会を傍聴に行ったことがあったけど、感想は気持ちが悪いってのが一つあっただけだ。市議会のことを伏
魔殿だと言う人もいたが、まあ根の腐った人間の見本市だよ。(笑)権力への平伏っていうことでは、鋳物師屋の区政も千曲市の市制も同じだ。議員とか協議員
たちは、区長や市長ってのは、雲上人だとして扱うんだよ。どこが雲上人なんだ。ちゃんちゃらおかしい。
そういえば、中区の反対運動の過程では「市長がついた嘘」というものもあった。宮坂博敏という元市長は、「中区が自主的に要望したから、中区を建設地の
候補にした」と言ったが、区長たちが区民にまともな説明をしないまま、ぱらぱらの拍手で「決議」をでっちあげたことには一切触れなかった。俺がそれをビラ
で指摘しても無視し続けた。ただの嘘つき野郎なんだよ。何が雲上人か。
中区の人たちが総会で「白紙撤回」を決めたことは、「中区が要望した=中区の住民の意思」という市長の立てた式がにせものであることも証明したんだ。ご
み処理施設誘致は住民の意思ではないということをはっきりさせたことには、その意味もある。中区で決議がなされる少し前から、中区の区長経験者と市長の間
で言い分が違ってきていた。区長をやった一人は、「そんなでかい計画を俺たちが考えつくわけがない。市が話を持ち込んできたんだ」と言い出した。「中区が
要望したから、市が動いた」と市長が言っているのは嘘だと、区長の一人が言い出した。むこうがこっちへ話を持ってきたんだと言い出した。中区の「白紙撤回
決議」の前に、「市長が嘘をついてる」ってことが区長側から証言として出てきてた。
生ごみ堆肥化施設、焼却溶融炉の計画について、中区で「白紙撤回」が決議されて、千曲市は市内の全町村に対して、誘致の希望を提出させることにした。近
藤という市長がその意向を打ち出して、議会がそれを呑んだ。
自分のところに作ってもいいという村や町があったら手を挙げろということにしたんだ。中区での誘致でっちあげは住民無視だという批判があったからそうい
う形をとることにしたんだろう。それで、誘致を希望して手を挙げた村や町は一つもなかった。
この時点で、長野広域連合が千曲市に押しつけている計画の白紙撤回を要求する動きが市議会にあって当然だった。千曲市長がのこのこと長野広域連合の副連
合長なんかになってるが、かまうことはない。千曲市のどの町も村も手をあげないってことは、千曲市の住民が長野広域連合の計画に賛成してないってことなん
だ。住民の意思を重んじる気があるんなら、市長が長野広域連合の副連合長であろうがなかろうが、千曲市議会が計画を蹴飛ばせばいいんだ。
だけど、市議会議員なんてのはこすずるいことにかけては一流だが、議会が本来どう動くべきかの判断に関してはほんとに馬鹿ばっかしだ。
議会は、誘致希望の村や町がない場合は市長が勝手に候補地を決めるという案をすんなり通しちゃった。この時点で、市長は近藤清一郎という人に変わってい
たが、近藤は宮坂という前市長の跡取りだから、再度中区が候補地にされるという可能性はまだ残っていた。それで俺は、隣接する村の意見として鋳物師屋区の
意見を形にしてもらいたいというビラを刷って鋳物師屋の中に配った。隣接する村としては、すでに新田が中区への建設反対を村の意思として形にしていた。新
田の場合は、区長がアンケートをとって区の意思を形にした。
協議員になる直前の三月、俺は鋳物師屋の総会に出席して、鋳物師屋区としての意思を形にして欲しいと要望を言った。鋳物師屋としての意思を形にしてもら
いたいという場合、総会で自分の要望を言うしかない。少なくとも、総会で区民が直接に要望を言うってことはあっていいはずだが、総会では出席者に諮ること
も出席者による「決議するかどうかの決議」も行われなかった。
俺が鋳物師屋の中にビラを配った時点で、新区長寺沢喜孝と議長の間で申し合わせがあったらしい。寺沢の長いお説教話があり、議長が勝手に「議決しませ
ん」と宣言して、俺の要望は却下された。やってることがめちゃくちゃなんだ。
ビラでは、自分の考えとして、「区としての意見を形にしてもらいたい」と書いて村の中に配り、総会では「この場で皆さんに諮ってもらいたい」と言ったの
だが、諮るということさえ行われなかったんだ。
区長経験者のIさんも、「諮ってもらいたい」と発言したし、交替する直前のTK区長も、「(誘致を希望するかどうか市に返事をする書類に)鋳物師屋区の
意見を書き添えることはやぶさかではない」と言った。そういう意見を全部無視して、新区長の寺沢喜孝が長々とお説教を始めた。「鋳物師屋という村は仲のい
い村で、決議だの投票だのとことごとしくやるのはふさわしくない」とか、なんたらかんたら、校長先生みたいな長たらしいお説教を始めた。無記名投票なら、
村の人たちの仲が悪くなるなんてことはない。なんで投票をやれば、村の人たちの仲が悪くなるっていうのかちっともわからない。そして、寺沢の長たらしいお
説教が終わったと思ったら、議長が唐突に「議決しません」と言った。こんな形で区民の要望を葬り去る権利が議長にあるわけがない。俺だけじゃなくて、Iさ
んも「みんなに諮ってほしい」と言っていた。議長は「どうしますか」っていう具合に、出席してる人たちに意見を求めるところから始めるのが当然だ。みんな
に諮るってことがあって当然なのに、寺沢新区長に長ったらしいお説教を続けさせておいて、その後にいきなり「議決しません」だ。議長がそう決めたんだ。議
長がそんなことができるはずがない。めちゃくちゃなんだ。
こちらはすぐ議決しろと言っていたのではない。議決するかどうか区民に諮ってほしいと言っていたのだし、それに対して「諮ってもらいたい」という声は俺
以外にもあったんだ。それをみんな無視して、寺沢喜孝のお説教と議長の越権行為とで、区民たちの声を勝手に葬り去った。区民に諮るということすら葬り去っ
た。最高の議決機関=総会で、区民の声をそういうふうに葬ったんだ。
みんなに諮って欲しいと言った俺としては、なるべく多くの区民に発言してもらうつもりで、その後は黙っていたんだが、新区長寺沢の長いお説教が続いた。
そして、いきなり議長の「議決しません」宣言だ。
寺沢の長話なんかどうでもいいんだ。区長の考えは区長の考えとして言うのはかまわないが、長話やお説教をする必要はない。手短にしとくがいい。大事なの
は区民の声だし、区民がよく話をすることだ。そう思って俺は黙っていたんだが、いきなり「議決しません」だ。ほんとに馬鹿げてる。
議長は新区長Tによる猿回しの猿以上のもんじゃない。この議長は町で、Kという飲食店をやってる。鋳物師屋の協議員会の暑気払いという飲み会なんかは、
会場はこの店ばっかりだ。区長にごますっておけば、店の売り上げになるって寸法だ。そのための猿回しの猿だったら、なさけねえ話だな。
区民や区長経験者が「諮ってほしい」と言っていたんだ。それは何よりも大事にされなきゃいけないのに、寺沢喜孝っていう新区長がお説教を垂れ流したか
らって、「議決しません」などと勝手に決めるんじゃねえってんだよ。間違いなく越権行為だ。まあ、あれで、猿を踊らせているのは寺沢なんだってのはよく見
えた。馬鹿みたいだと思ってさ、俺はその年の寺沢という区長をまったく信用しなくなったな。
三月の総会での「諮ることさえ葬り去る」議事の直後の四月、寺沢は新区長になり、俺は寺沢が招集する協議員会の協議員になったわけだ。
寺沢って区長は、酋長みたいに自分勝手に決めるだけだが、その勝手に決めてることの何がどうなのかってって話がまるでわかりにくい。協議員が「ちょっと
待ってくれ」とか言う余地が生じないように、自分でずらずらと話し続けてその場の空気を作っていく。総会で長々とお説教こいた直後に、議長に「議決しませ
ん」なんて言わせた「諮ること自体の葬り去り」と流儀が同じなんだ。いつ決まったのか知らないけど、「これこれこういうことになりました」とか、「こうい
うことになってます」って言う口調でしゃべった後、「承認していただきましたので」って言うんだ。
いつどこで誰が決め、誰がどの場で承認したのかというようなことがわけがわからねえの。一種のマジックだな。協議員が一言もしゃべってない時にも、「承
認していただきましたので」ってなる。
協議員が黙ってる時ってのは両義的でさ、承認してる場合もあるし、話の内容がわからないので黙ってる場合もあるんだから、どっちなのか確認しなきゃ駄目
でしょ。だけど、寺沢のやり方では、協議員が黙ってれば、全部「承認」なんだ。
だいたい、わかりにくくしゃべるってのが、そこへ持って行くためのものなんだ。寺沢ってのは、わかりにくい話をするのが大変にうまい。(笑)話がわから
ないとさ、協議員は遠慮してもの言わねえわけ。他の人はわかってて、自分一人がわかってねえんじゃねえかと思ったり、もの言ったら笑い者になるんじゃねえ
かとか、遠慮があるからさ。そういう空気ってのを寺沢はうまく作るんだ。ほとんどが、なんだかよくわからないうちにものごとが進行して、いつのまにか協議
員が承認したことになってる。俺もかなり鈍いんで、協議員会が終わった後になって頭にきたりしてたことが何度もある。(笑)
こんなふうにものごとが決まっていくんなら、協議員の責任なんてとれっこねえなと思ったりした。協議員てのは二年あるし、まあ様子を見ていようと思った
こともあって、寺沢が区長をやった一年てのは、俺はそれでも割と静かにしていた。距離をとって黙って見ていた回が多い。寺沢ってのは甘ったるい菓子みたい
な声出して、やたらにこにこして、気持ち悪いったらねえんだが、あいまいな空気を作るのはうまい。なんとなく協議員がものを言わなくなるような空気を作る
才能がある。にこにこして協議員を褒めあげる一方で、進行していることがどういうことかはよくわからないように話すんだ。
協議員を褒めあげて、話がわかりにくいように話してるのが、俺んちの庭で「協議員なんてものは思いつきをしゃべってるだけだ」と言ったご本人なんだ。な
んで協議員の俺に「協議員なんてものは」なんて言うのか、本当に不思議だったけど。(笑)
途中でね、俺がどうしても仕事から抜けられなくて、女房が代わりに出た協議員会があったんだけど、そこでは結構活発に意見が出たと女房から聞いた。
もう話したことと同じだけど、エレベーターを公民館に設置するっていう動きがあるみたいだけどどうなっているのかと協議員が常会の人に聞かれて、何も知
らないから答えられなかったという発言があった。常会の人に聞かれて協議員が答えられないようじゃ困るという発言が出た。だけど、女房からその話を聞い
て、そういうことになるのは当たり前と言えば当たり前なんだとも思ったね。
総会で区民の一人が、「みんなに諮ってくれ」と言っているのに、自分で長々とお説教を垂れ流して、諮ること自体を葬り去るようなことをやった区長なん
だ。そいつが区政をやれば、区民や協議員にものごとを「知らせない区長」になる。そこが腐っているんだ。これ、「知らせない」ってことで、中区の「腐れ区
長」どもと何の変わりもない。区民になるべく発言させず、なるべく知らせずってことでやるわけだ。区民の要望を葬ることと、区民や協議員に「知らせない・
はっきりさせない」ってことは根が同じなんだ。
ぶったまげた話がひとつある。女房が出た協議員会で、寺沢は「エレベーター設置委員会から報告が来ないので事情がよくわからない」と言ったそうなんだ。
「エレベーター設置委員会」ってのは、寺沢が協議員会の承認も経ずに、自分で勝手に作ったものなんだぜ。成員は四、五人で規模はご大層なもんじゃない。
協議員会の承認も経ないで、勝手に委員会を作っておいて、寺沢喜孝は自分でその委員会の委員長をやっていたんだ。俺んちの庭で「協議員なんてものはただそ
の場の思いつきをしゃべってるだけだ」と言い、実際に協議員会を無視して、別に委員会をでっちあげたご当人が、その委員会の委員長なんだ。それで、「エレ
ベーター設置委員会から報告が来ないので事情がよくわからない」って、「区長として」言ったってんだから、ぶったまげた。エレベーター設置委員会の委員長
と区長は同一人物なんだぜ。寺沢は四、五人の委員会の委員長なんだから、その委員会で決まったことなんか全部知ってるに決まってる。それで、「委員会から
報告がない」とほざくんだ。こうやって、寺沢は協議員というものをコケにしていたんだ。
IさんもTKさんも委員だったはずだから、今後も詳しく話を聞いてみようかと思ってる。協議員会で、エレベーター設置委員会から報告が来ないからわから
ないなんて、寺沢はしゃあしゃあとアホくさい嘘を言って、これはまったく蛙のつらにしょんべんだ。この程度の嘘がバレねえと思っていたんだ。寺沢は、協議
員会なんてものは赤子の手をひねるように簡単にコケにできるはずだったんだ。しゃらくせえっての。なめんじゃねえっての。
古い村が核になってるから、お祭りの段取りだとかなんだとか、新しく住みついた住民じゃわからないことはあるよ。そういうことに関しては、協議員会では
手に負えないから、委員会やら長老会を作ってもらってそこで決めてもらうのがいいっていう具合に、協議員会がお願いして、委員会やら長老会ができたという
んなら何の文句もないわけだよ。
だけど、寺沢は協議員会をコケにして、勝手に委員会を作ってる。エレベーターを公民館に設置する程度のことなら、協議員会で協議して決められる。その程
度のことが協議できないようなら、協議員会も糞もねえんだ。寺沢は勝手にわざわざ別委員会を作ったんだ。
「エレベーター設置委員会」を作ることは協議員会に諮ったのかと俺が質問して、諮ってないことがはっきりしたが、それまで協議員の誰も、寺沢が勝手に別
委員会を作ったことを問題にした者がいなかった。俺が問題にしても、何のことやらわからないっていう顔をしてる人が多かった。ほんとにどうしようもねえ
な。
さすがに、常会の人に聞かれて協議員が答えられないようじゃ困るっていう発言は無視できなかったらしくて、その後「説明会」という名目で臨時協議員会と
いうのが開かれた。だけどその臨時協議員会は、寺沢の前の年に区長をやったTKという人を糾弾する会になった。
TKという人は、元々の鋳物師屋村の人ではなく、新しく家を建てて住みついた人だ。俺が協議員になる前の年の区長をやった。この辺の村は、区長というの
と代理区長っていうので、区政を切り盛りしてて、TKさんが区長をやっていたときの代理区長が寺沢喜孝だ。通例では、代理区長が翌年の区長になる。
TKさんが区長をやっていた時、俺んちにきてぼやいたのでわかったんだけど、TKさんと寺沢の間でことごとく意見が一致しないというようなことがあった
らしい。TKさんは多少開明的なところがあって、新しいことをやりたがるんだが、寺沢はもうにこにこ古ダヌキだからさ、TKさんが考えることを片っ端から
却下したらしいんだ。総会で区民の声を却下したのと同じ流儀なんだろうよ。
TKさんと寺沢喜孝の争いの余塵なんだろうけど、寺沢が区長になってから開かれた協議員会で、寺沢があからさまにTKさんの悪口を言うってことがよく
あった。俺んちの庭で言うっていうんじゃねえんだぜ。協議員会っていう公の場で、前年の区長の悪口を言うわけ。
おれんちの庭では、寺沢喜孝は、新田の区長の悪口も言ってたな。Nさんていう新田の前区長で、新田の村の意見をアンケートで形にした人だが、寺沢は俺に
向かってNさんを口汚く言ってたな。普段はにこにこしてて、腐ったケーキみたいに気持ち悪いんだが、Nさんの悪口を言うときは、口の脇に白く唾を浮かべ
て、じじい本気でしゃべってたな。(笑)
なんで唾が湧くほど本気にしゃべるのかほんとにわけがわからないんだ。村の意見をとりまとめて形にし、市につきつけることが何で口汚くののしらなければ
ならないことなのかまったくわからない。わかることは、この口汚さこそ、にこにこダヌキの正体だってことだけだ。寺沢は区民の声を形にすれば、何か損でも
するんかねえ。
俺んちの庭でならともかく、寺沢が協議員会で前区長の悪口をおおっぴらに言ってたことに話を戻すけど、代理区長ってのは、区長が他の用事で手が回らない
場合に、区長の代理として各種の会なんかに出席するっていう意味で「代理」なんじゃないのか。そうだとすれば、「代理」って言葉がついていたって区長は区
長なんだ。区長と代理区長の両方に等しく区政の責任はあるはずなんだ。
だけど、寺沢が言っていたことってのは、とにかく一切合切TKが悪い、あいつが全部悪いってことだった。それを協議員会って場所で言うんだ。誰だって、
「なんだこいつ」って思ったはずなんだ。だけど、誰もそれは言わない。区長さんて言っておだてあげてる。協議員会ってのも駄目なんだよ。
エレベーター設置というのは、村の年寄りの一人が金を寄付するから公民館にエレベーターを取り付けて欲しいという話から動き始めたものだ。寺沢の前の
TK区長と、寄付する人との間でひとまず五百万という寄付の額が話されたらしいが、その後、寄付する人と息子との間で一悶着あったらしくて、寄付額が二百
五十万に減った。
臨時協議員会では、元銀行員の協議員が、サイノウってことを何度も言って、俺は後で辞書をひいて「採納」って言葉があるのがわかった。
この元銀行員は採納も済んでいないのに、TKさんが五百万という寄付金額を一人歩きさせたことを責めているんだというのがわかった。例えば、設計士に設
計を頼むなんてことも、「採納」が済んでからやるべきことだというわけだ。つまり、実際に寄付金が納められてからにすべきだったというんだ。当然の話だ
な。TKさんも自分が五百万という寄付金額を一人歩きさせたことの非は認めた。寺沢が協議員会で言った「あいつが全部悪い」というのに根拠が提示されたか
のようになったんだが、なんかこの糾弾会は違うなという感触は残った。
そもそもは、常会の人にエレベーターのことを聞かれ、協議員が何も知らされていないので答えられなかったということがあり、それではまずいということ
だったはずなんだ。問題はむしろ、寺沢が協議員会の承認も経ずに勝手にエレベーター設置委員会というものを作ったこととか、自分がその委員会の委員長を
やっていながら、「委員会から何の報告もないからわからない」などととぼけているのがおかしいということだったはずなんだ。寺沢のやってることがおかしい
というポイントが外されて、「採納」が済んでいないのにTKさんが勝手に動いたということだけがクローズアップされ、TKさんを糾弾する会になった。
そのあたりのこともさ、俺は頭の回転がゆるやかだから(笑)、後になって、あれはそういうことかとわかったりして、臨時協議員会のときも、後になって無
性に腹がたったりしてたんだ。その場で、どんどんポイントが突けないってのがなさけねえとは何度か思ったな。俺、ほんとにその場に即応して言葉を言うって
いうのが苦手なんだ。なさけねえけど、「話し言葉」」っていう場が苦手なんだ。
寺沢の「委員会から何の報告もないからわからない」なんていう言いぐさがでたらめきわまりないもんだというのも今になってようやくわかる。寺沢がそう
言っていたと俺が女房から聞いたのがずっと後のことだったから、これはしょうがない。それは俺、女房に何度も聞いたんだ。本当に寺沢はそう言っていたの
かってさ。女房は間違いなく聞いたと言ってる。なんなら、女房を証人として呼んで、臨時協議員会を開いてもらうしかねえかな。(笑)
自分がその委員会の委員長のくせに、「区長として」、「委員会から何の報告もないからわからない」なんて言ったってことは、この男はどんなでたらめでも
言うってことだ。
総会で区民から「みんなに諮ってくれ」という要望が出ているのに、自分で長々とお説教を垂れ流して、根回し議長に「決議しません」などと言わせ、区民の
要望を葬り去ったようなやつは、国が戦争をやるって言えば、村の人に向かって長々とお説教をこくんだ。あのにこにこづらはそういうにこにこづらなんだ。本
当は恐ろしいものだ。
協議員会に諮りもせず勝手に別の委員会を作る。つまり、協議員会の骨抜きをやる。勝手に作った委員会で何がどう決まったのか、協議員会に知らせないこと
で、協議員会無視をやる。それだけじゃない。自分が委員会の委員長のくせに、委員会から何の報告もないからわからないなどと、「区長として」うそぶくん
だ。それだけで、寺沢がたちの悪いじじいだというのははっきりしている。気持ちの悪いにこにこづらってのは、嘘を覆うためのものなんだ。カモフラージュな
んだ。バレねえと思ってやがんのがお笑いぐさだよ。
常会の人たちに聞かれて協議員が答えられないようでは困るということで開かれたはずの「説明会=臨時協議員会」が、いつの間にか「採納」云々の問題にす
りかえられて、TKさんの糾弾会になったところにも、この寺沢というにこにこ古ダヌキのやり口がはっきり現れてる。「嘘」があるんだ。何が区長さんかよ。
こんなものただのたちの悪い嘘つきじゃねえかっていう思いはコンクリートみたいに固くなっていったな。炭平の帳簿は通ってねえコンクリートだけど。(笑)
総会で一区民が出した要望を寺沢が葬り去った時に抱いた不信というものがあったんだが、それはどんどん大きくなって固まっていく感じだった。にこにこづ
らを見るだけで、むかむかするっていうくらいになっていったんだ。「にこにこ・むかむか」ってくらいに短絡するようになった。(笑)どうも俺は頭が悪くて
さ、なんかいやな感じだとか、なんかおかしいぞと感じるんだが、なかなかその場でなにがどうなのか言葉にして斬り込むってのができない。それで、ずっと納
得できないとか、変だという気持ちは持続してて、協議員会をやってる二年間てのは、実にいやな二年間だった。内臓に悪いって感じで、腹の中で何かがよじれ
るというか。協議員会で、なんかおかしいと思うんだが、その場ですぐに言えないので、腹の中に泥がたまっていくって感じだった。今でもそうだよ。泥が深く
なるばかりみたいな感じだ。吐き気みたいなものを感じていた時期もある。実質的な厄年だったと思うんで、こうやってしゃべって泥を吐き出さないと、塾の仕
事にもまともに戻れないような感じがあってさ。だけど、なんか吐ききれない感じが、いやな感じがずっとある。
寺沢が区長をやってた一年目の「エレベーターに関する説明会=臨時協議員会=TK糾弾会」の後で、「臨時協議員会報告」っていう書類が協議員に配られ
た。俺、今年の三月の初め頃に、じき協議員やるのも終わりだなと思って、二年間に配られた書類を整理してみたんだ。普段、整理なんてことをやらねえんだけ
ど、どういう風の吹き回しかね、書類の整理をしたんだ。そしたら、「臨時協議員会報告」ってのが出てきた。そこに、エレベーター設置予算の「最終的な金
額」ってのが載ってたんだ。話を蒸し返すけど。
寄付金が五百万から二百五十万に減った頃には、山の滝沢建設ってところから出てた見積もりが五百万だった。それは「糾弾会」で、TKさんが言ってた。
TKさんは仙石って村で、公民館にエレベーターを設置したときは三百万だか三百五十万でできたっていうようなことも言った。相場としちゃ、今時、そんなも
んじゃねえかね。鋳物師屋では、総額で八百六十万以上使ってる。鋳物師屋のエレベーターがどれほど立派なエレベーターなんだか、今度、仙石のと乗り較べて
みようかと思ってる。(笑)
中区のMTって区長が「民主的な手続きを経て決議された」って言ったことはしゃべったけど、これ、腐れ区長なわけ。説明しないで、パラパラの拍手で決議
だって言うんだからさ。鋳物師屋の区長も、寺沢なんかは典型的な腐れだ。総会で区民が要望を出しているのに、その場の人たちに諮りもしないで、議長に区民
の要望を流産させた。腐れ区長だ。
腐れ区長がやるのは、腐れ民主主義だな。
MNっていうその次の区長は、寺沢がやったことを切開できなかった。ユスリカの大量発生の問題なんかも流産させた。つまり、鋳物師屋村には腐れ民主主義
がまかり通っているんだ。これさ、俺は日本全国津々浦々でこんなことをやってるんだろうと思ってる。こんなもんが民主主義づらしてるから、俺は民主主義が
大嫌いなんだ。正確に呼べよって思う。それの正しい名前は「腐れ民主主義」だよ。ちゃんと「腐れ」っていう形容句をつけなきゃ詐欺だよ。それが全国にはび
こっているんじゃなければ、俺も一つや二つの村にこれだけつべこべ言う必要はねえ。疲れるし、怨み買うだけだし。だけど、こんな「腐れ民主主義」を放って
おいたらろくでもねえことになる。それは間違いなくろくでもねえことになる。それは中区へのごみ処理施設建設に反対してよくわかったことなんだ。
エレベーター設置の金額がどんどん膨らんで、まあ、湯水のように使われたってことがあるんだが、七五三万に膨らんだ後、実際は八六一万使ってるってのは
もうしゃべったけど、その八六一万ていう数字がエレベーター設置委員会の決算書に出ていない。七五三万から八六一万に膨らんだことを協議員会で説明された
覚えがないから、「これ誰も説明聞いてないんじゃないか」と発言したんだ。区長や会計の人は、調べてみると言った。「根石さんの誤解だと思うよ」と言われ
た。「帳簿があるから使い途はわかる」とも言われた。そりゃ、八六一万の内訳は整合性がとれるように記載してあるんだろう。そのあたりに、寺沢のヌカリが
あるとは思ってない。
だけど、七五三万が八六一万に膨らんだことを協議員が聞いてないことがおかしい。協議員会がとことんコケにされていることを、協議員たちはどうするつも
りなんだろう。
俺、その問題を常会の総会で文書に書いて配ったんだが、その後、村の中に表だった動きは何もないな。鋳物師屋はほんと、気持ち悪い村だよ。
「根石さんの誤解だと思うよ」と言われたのは、最後から二度目の協議員会だけど、最後の協議員会が英語のレッスンの日と重なったので、女房に出席しても
らった。後で、俺が質問したことをどう言ってたか女房に聞いたら、区長が「説明したと思う」って言ってたっていうんだ。そうかいと思って、寺沢が区長を
やってた年の議事録を全部読んでみた。手書きの走り書きでメモを取った程度の議事録だから読みにくくてしょうがないんだけど、七五三万が八六一万に膨らん
だことの説明は議事録のどこにもなかった。俺は聞いた覚えはない。協議員会で「誰も聞いてないんじゃないか」と俺が言ったとき、協議員たちは全員無言だっ
た。
寺沢が区長だったときの書記は、これまた小学校の校長(笑)らしいけど、まさかね、校長先生ともあろうものが、そんな大事なことを書き漏らすようなボン
クラだとも思えないしな。
議事録になかったら駄目でしょ。致命的でしょ。議事録ってのは、そのくらいに大事なもんでしょ。
こんな殴り書きみたいな議事録でいいんかよとは思ったけど、それでもそれが正式な議事録なんだ。工事金額が再度膨らんだという大事な話はそこに載っていな
い。どうすんのかね。校長先生をボンクラだとして煮え湯を飲ませ、説明はしたとでっちあげるわけにはいかないだろうと思うんだ。
俺は協議員二年目で書記をやらされたんだけど、出た発言はなるべく残そうと思って記録した。
そしたらよ、「文語で書け」って、やたらに何度も文句言われた。「文語で」って何のことか、と思うじゃねえか。江戸時代の古文書かなんか調べて真似して
書けって言ってるのかと思って(笑)、「文語でって何のことですか」って聞いたんだ。なんのことはねえ、要するに「いもじや新聞」と同じでさ、決まったこ
とだけ書けって言ってるだけのことなんだよ。なにが「文語」かよ。腰が抜けそうになった。(笑)途中経過は書くなって言っているだけなんだ。俺は途中経過
が大事だと思っているから、全体の三分の一から半分くらいに縮めて、それでも後で大事になるかもしれないものはテープ起こししてなるべく残した。そのこと
でさんざんに文句を言われた。これ、けっこうもめたな。そのもめてる様子も議事録にしてある。(笑)
書記をやらされたのも、俺が鋳物師屋の議事録の扱いがなってないって発言したからなんだ。そういうご立派なことを言うやつは、自分で書記をやるがいいと
言われてさ、ああそうかいと思って引き受けた。
協議員会の前に、毎回、テープ起こししたやつを協議員宅に一軒ずつ配って歩いた。前回の協議員会の残すべきものをなるべく忠実にテープ起こしして、次回
の協議員会で余計なものを削り、漏れているものを指摘してもらうつもりだった。議事録として固定するための準備として、毎回、「議事録案」というのを二〇
人以上の協議員の家に配って歩いたんだ。
だけど、議事録を固定するための手続きに協議員は無関心だし、区長や議長は「文語で書け」とかわけのわからないことを言うし、「〜じゃねえか」とか、
しゃべり言葉をそのまま残すと、「議事録にふさわしくない」とかわけのわからねえ文句は言うし、さんざんだった。何気取ってんの?、だよ。(笑)
一人の協議員なんか、「プライバシーの侵害だ」なんて言うんだぜ。実際にしゃべったことを記録に残して「プライバシーの侵害」なんてことを言うっての
は、その人は協議員会でプライバシーをしゃべってたのかよって思って、ほんと疲れた。だって、俺、協議員会で協議員がプライバシーなんかしゃべるなんて、
そんなことあるわけねえと思ってるもん。どこからプライバシーなんだか、書記に判断させねえで、自分で判断して、プライバシーはしゃべんないでおくんなさ
い、っての。(笑)協議員会で、プライバシーなんかしゃべってたんなら、そっちの方がよっぽど非常識だって。疲れるんだ。(笑)
例えば、俺が自分の発言の部分で、「〜じゃねえですか」ってのをそのままテープ起こししたとするじゃん。それをつかまえて、よくないって言うわけ。品が
よくねえっていうわけよ。だってね、俺、実際に品がよくねえし(笑)、議事録に残る言葉としても、品がよくねえことをまったくいつわりたくねえわけよ
(笑)。「〜じゃないでしょうか」なんて、口が裂けても言えねえというか、言うと本当に口が裂けちゃうかもしんない。(笑)
「議事録案」は結局、協議員会でまともに扱ってくれなくて、苦労は水の泡みたいになったけど、俺が作った案は、最終的には「案」のまま議事録として正式
に固定された。検討する時間がないってのが理由だけど、「文語で書け」だの「プライバシーの侵害」だの、どうでもいいようなことでギロンこいて時間をつぶ
してたのは、いったいどこのどいつらなんだ、まったく。
議事録の「案」は、人名なんか、クエスチョンマークだらけなんだけど、そのまま議事録として固定すると区長が言った。
「案」のまま議事録を固定するに際して、区長や議長が言っていたことは覚えている。各協議員の家に配られたものは協議員各自で「処分しろ」と言ってた。
「案」をそのまま正式の議事録として、区長がファイルし保存するので、「案」は処分しろっていうんだ。正式の議事録とまったく同一内容のものを、協議員や
区民が持っていて何の不都合があるというんだろう。
ミソは「区長が保存する」ってところなんだろうな。協議員が持っていたり、区民が持っていたりして、村の中に出回っていたら、誰でも読めちゃうからまず
いってわけなんだ。区長が保存するんなら、区民は議事録を読みたいときは区長のところへ行って、閲覧しなくちゃならない。つまり、敷居が高くなるわけだ。
そうしておけば、誰も読むやつはいないという腹づもりなんだろうと思うんだ。何年かしたら、俺、区長のところに閲覧しに行こうかと思ってる。(笑)
まあ、それでもいいわさ。俺のパソコンにはテープ起こししたファイルも音声ファイルも残ってる。他のメディアにも保存してある。むこうの出方によっ
ちゃ、ネット上でみんな表にしてやろうかと思ってさ。
「会社だったら、すぐに首だ」などとほざいたNという協議員は、俺が作った議事録案のことを「人に見せると、こんなの議事録じゃないって言って、笑うん
ですよね」とか協議員会で発言してた。それも「議事録」に残してある。Nは、「案」の段階で、協議員でもなんでもない人に「案」を「議事録」として見せて
るわけだ。それについては誰も何も言わないんだから、俺の手元にある「案」の字が消されていないものも、人に見せて問題はねえってことになるな。
鋳物師屋には規約がないわけだから、「議事録」は鋳物師屋区民以外は読めないということもないわけだ。規約がなければ、寺沢みたいな者がやりたい放題を
やれるんだから、区民もやりたい放題でいいわけだ。少なくとも俺は、寺沢によって、「総会での発言」を流産させられた当人なんだ。落とし前はついちゃいね
えんだ。今回、俺が問題にしたのは、ほとんどみんな寺沢がらみのものだ。寺沢が、「最終的な金額」の七五三万から百万以上も多く金を使っていることも、
MN区長は「説明したと『思う』」と言っていたが、その年度の議事録に説明の記載がなければ駄目なんだ。そういうことの説明があったら、ボンクラだって記
録するよ。まして、その時の書記は小学校の校長先生(笑)だぞ。議事録ってものをなめてんじゃねえっての。区民に説明しないとか、議事録にないということ
は致命的なんだ。
やっぱ、寺沢ってやつは、総会で出た区民の声を長ったらしいお説教で葬ったときから、自分のために墓穴を掘り始めていたとしか思えない。
それから、俺が作った議事録案に対して、「文語で書け」だの「こんなの議事録じゃない」だの「品がない」だの、どうでもいいようなことばっかり言って、
時間をつぶしていたやつらの責任というのはどうなるのかねえ。
とにかく疲れたよ。あっち行ったり、こっちへ戻ったりの話で申し訳なかったけど、とにかく泥は吐き出しておかねえと。そうしないと、今の体調の悪いのも
元に戻らねえような気がしてさ。ひとまず「ハリマオ」の原稿にしちゃえと思ってさ。だけど、まだ半分も泥を吐き出してねえって感じなんだ。
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